映画監督が紛争地帯を旅する映画「ユリシーズの瞳」(テオ・アンゲロプロス監督)に、こんな場面が出てきます。濃霧のために一時休戦となった荒廃の街で、人々はおしゃべりを楽しみ、散歩をし、歌を歌い、そして芝居を上演する。それがまるで人類の本能ででもあるかのように。
つかの間おとずれた平和の寸刻で、芝居をやる。街が滅び、立派な機材や大掛かりな劇場がなくても、そこに人がいれば、芝居はできる。太古の昔から、人はそんなふうに日々を暮らしてきたのでしょう。
ヒコ・カンパニーがつかまえたいマインドはそれです。
そんな気持ちで、芝居を上演していきます。人の営みとしての芝居を、シンプルに。
他に難しいことは何も考えておりません。
港 岳彦
1974年生まれ。脚本家。2024年『正欲』でおおさかシネマフェスティバル脚本賞受賞。同年より九州大学芸術工学研究院教授を務める。脚本を手掛けた主な映画作品は、『ぼくが生きてる、ふたつの世界』『アナログ』『ゴールド・ボーイ』『とんび』『宮本から君へ』『あゝ、荒野』など。TVドラマ作品に『仮想儀礼』『前科者 -新米保護司・阿川佳代-』。